S50C,S55C,SCM440系金型材トータルVA対策はPXZで決定?
「S50C系金型材トータルVA対策はPXZで決定?」について、考えます。
「プラスチック金型材のトータルVAを考えるとPXZだ!!」と、カタログに記載が有ります。
ただし、比較対照がS50Cのようです。
このページは大同特殊鋼の「DAIDO PXZ カタログNo.SC0008 01.03.1,0(NA)」を元に作成しました。
確実な情報が必要なときには、大同特殊鋼の最新カタログを取寄せてください。
1. 目的
プラスチック金型製作費用を考えましょう。
材料費、加工費、修正費、修理費、などの、全ての費用をS50C比較すると、PXZに決定でしょうか!!
S55Cノルマル材と比較して、どうなのでしょうか? 上か下か、不明です。
1-1.プラスチック金型のトータルコスト低減
・金型製作コストのS50Cと比較で大幅低減
・金型製作納期のS50Cと比較で短縮
・溶接性のS50Cと比較で向上
・ニアネットシェイプ納入
S55Cノルマル材やSCM440と同レベルか、PXZの方が良いのでしょうか? 不明です。
1-2.金型品質、成型品品質の向上
・S50Cと比較で高靭性
・S50Cと比較で型寿命向上
S55Cノルマル材やSCM440も、品質向上に役立つと思います。PXZとS55Cノルマル材とSCM440の比較はどうなのでしょうか?
2. PXZの価値
PXZの価値は無限大?
S55Cノルマル材も無限大??
2-1金型製作コスト大幅低減
・加工性…S50C系型材対比2~5倍
・溶接性…S50C系型材を超える使い易さ
・ニアネットシェイプ納入
・加工性、溶接性、ニアネットシェイプ納入により、製作時間の短縮
2-2高い成形信頼性・高靭性(ワレ、亀裂防止)
・中心部強度(型寿命向上)
2-3新しい金型づくりへの展開
・試作型からの量産型への転用(溶接性、加工性)
S55Cノルマル材やSCM440は、PXZに負けるのか?
3. 特長
HS30(12HRC)タイプ・プリハードン材、切削加工性を最大改良と補修溶接の品質向上が特長です。
HS30(12HRC)をプリハードン材と言うのだろうか?
S55Cノルマル材もHS30(12HRC)有りそうですが。SCM440はどうなのだろうか?
3-1基礎特性
・被切削性:切削能率が大幅に向上し、加工工数が大幅に改善されます
・放電加工性:表面硬化層の硬さが低く、後工程が簡便となります。
・鏡面仕上り性:材料の偏析が少なく、きれいな仕上げが期待できます。
・シボ加工性:材料の偏析が少なく、シボムラが改善されます。
3-2溶接後の金型品質保証
・割れ特性:S50C材より良好な溶接性を有しています。
・鏡面仕上り性:熱影響による硬さ上昇が少ないので、鏡面均一性に優れています。
・シボ加工性:境界部のムラが軽減されます。
・被切削性:硬化しにくいので、加工が容易です。
4. 素材形状
素材:黒皮平板のみ確認
プレート:不明
PXZの在庫標準サイズが少ないので、S50CやS55Cノルマル材やSCM440を使用する事も考慮した方が良いかも。
5. PXZの位置付け
PXZをS50CやS55Cノルマル材より多少良い程度に考えましょう。
6. 機械的特性、物理特性
6-1 S50Cなどと硬度分布比較
特長/硬さ:内部までほぼ同等の硬さを示します。
効果/成形時の金型信頼性が向上しま丸
耐摩耗性、疲労強度向上により型寿命が向上します。
なぜ内部の方が固めになるのでしょうか?
6-2 S50Cと機械的性質比較
特長/特性向上:強度、靭性共市販S50C系以上の特性を有しています。
効果/深彫り型設計でも、型中心での強度は良好で丸市販S50C系材質より高靭性であり、割れトラブルの可能性は軽滅されます。
S55Cノルマル材と比較して、上下どっちでしょうか?
6-3
S50Cと熱膨張係数(X1016/℃)比較
20~100℃ | 20~200℃ | 20~300℃ | 20~400℃ | 20~600℃ | |
PXZ | 12.5 | 13.1 | 13.5 | 13.9 | 14.6 |
S50C | 12.1 | 12.9 | 13.5 | 14.1 | 14.9 |
6-4 S50Cと熱伝導率(W/m・k) 比較 【( )内数値:ca1/cm・sec・℃】
20℃ | 100℃ | 200℃ | 300℃ | 400℃ | |
PXZ | 39.8 | 41.7 | 43.1 | 43.1 | 41.9 |
PXZ | (0.0950) | (0.0997) | (0.103) | (0.103) | (0.100) |
S50C | 47.3 | 48.6 | 49.4 | 46.9 | 44.4 |
S50C | (0.113) | (0.116) | (0.118) | (0.112) | (0.106) |
6-5 S50Cと比熱(J/kg’K)比較 【( )内数値:Cal/g・℃】
20℃ | 100℃ | 200℃ | 300℃ | 400℃ | |
PXZ | 465 | 511 | 565 | 624 | 682 |
PXZ | (0.111) | (0.122) | (0.135) | (0.149) | (0.163) |
S50C | 473 | 515 | 565 | 603 | 661 |
S50C | (0.113) | (0.123) | (0.135) | (0.144) | (0.158) |
6-6 S50Cとヤング率(MPa)比較 【( )内数値:kgf/m㎡】
20C | 1OO℃ | 200℃ | 300℃ | 400℃ | |
PXZ | 207116 | 204959 | 197114 | 190249 | 185346 |
PXZ | (21120) | (20900) | (20100) | (19400) | (18900) |
S50C | 205940 | 202998 | 196623 | 189268 | 185346 |
S50C | (21000) | (20700) | (20050) | (19300) | (18900) |
PXZとS50Cのヤング率の違いは、硬さの違いによって生じるのでしょう。
7. 耐食性
PX5より耐食性は劣ります。耐食性が必要な所には使用不可でしょう。
8. 放電加工性
放電加工条件
●電極 Cu
●電極断面 □50
●電流電圧
(荒)26A-95A
(仕) 2A-40V
特長
放電加工面の硬化層硬さは、市販S50C系の80%レベルとなります。放電加工面粗さは市販S50C系に比べ、若干劣りますが、実用上間題のないレベルです。
効果
硬化層研磨の簡易さ:硬化層硬さが低いため、除去研磨作業が簡易かつ確実になります。
硬化層トラブルの滅少:表面の亀裂、剥離などのトラブルが滅少します。
実際に比較検討したほうが納得できるでしょう。
9. フレームハード性
特長/エッジ部の局部的フレームハードニングで、硬さは芯部の約2倍となります。
S50Cでも硬くなりそうですが。
10. PXZの溶接
PXZはS50C系より良好です。しかし、PX5より溶接性が劣ります。PXZは良好の部類です。
溶接条件例
溶接法 :MAG
溶接棒 :PXZ-W
溶接棒径 :1.2mm丸
溶接電流 :280A
ガス流量 :25リットル/分
予・後熱 :なし
10-1 溶接補修作業について
1. PXZは標準的溶接条件において、耐溶接割れ性はS50C材対比極めて良好です。
ただし、溶接割れは、①金型形状や②溶接条件の影響が大きくなります。
2. シボムラに対しては製品の意匠性要求程度にかかわる問題であります。
その要求が厳しい場合は、下記のような予熱、後熟など慎重な処理をとることが必要です。
10-2 肉盛溶接方法の予熱、後熱のポイント
1.金型形状にかかわらず溶接割れを防止する方法
予熱:溶接基本条件を守ると共に、200~25ぴCの予熱を実施ください。
溶接部の形状が複雑・面積が大きいなどの場合は、十分な均一加熱を施すことが必要で丸
2.溶接部のシボムラを改善する方法
後熱:シボムラを防止するためには、溶接後直ちに400~500℃の炉に装入し、1時間以上保持後徐冷することが必要です。
備考
●溶接後EDMによる加工修正を行う場合は、後熱(歪み取り)するとより安全です。
●溶接基本条件は新プラスチック型用鋼(No.SC9204)を参照ください。