SUJ2 高炭素クロム軸受鋼の説明 化学成分 熱処理
なんだか不明なので、考えてみます。
1.材料の説明
SUJ2は軸受け鋼です。用途は、ベアリングと玉、金型のガイドポストのシャフト、スライドシャフト、使い切りのような部品、ノックピンなどです。
用途を分類すると、ベアリングのような玉と軸で回したり、スライドさせたりの軸受け用途と、SK3より安く、同等に硬くのような使い切り用途でしょうか。
どちらにしても、丸形状が基本です。
2.素材形状
流通している物は丸棒と丸パイプが有ります。平板や平角棒は在庫としては存在しないようです。表面は黒皮で、触ると手が真黒になります。表面にニスも塗料も塗っていない、球状化焼鈍しそのままの状態です。でもなぜ、手が真黒になります。球状化焼鈍しのおかげでしょうか。
工具鋼も球状化焼鈍し熱処理をしていますが、表面にニスや塗料が塗ってあるので、触っても手が黒くなりません。この辺が、値段の違いでしょうか。
たまに、ミガキ(冷間引抜き、むき材)が有ります。
量がまとまれば、何でも生産できるので、SUJ2の快削鋼とか、SUJ4とかも存在します。
スライドシャフトのような加工品もあります。
3. 化学成分
化学成分を見たところで、どのような物か、理解はできませんが、比較はできるでしょうか。
記号 | C | Si | Mn | P | S | Cu | Ni | Cr | Mo |
SUJ1 | 0.95~1.10 | 0.15~0.35 | 0.50以下 | 0.025以下 | 0.025以下 | – | – | 0.90~1.20 | – |
SUJ2 | 0.95~1.10 | 0.15~0.35 | 0.50以下 | 0.025以下 | 0.025以下 | – | – | 1.30~1.60 | – |
SUJ3 | 0.95~1.10 | 0.40~0.70 | 0.90~1.15 | 0.025以下 | 0.025以下 | – | – | 0.90~1.20 | – |
SUJ4 | 0.95~1.10 | 0.15~0.35 | 0.50以下 | 0.025以下 | 0.025以下 | – | – | 1.30~1.6 | 0.10~0.25 |
SUJ5 | 0.95~1.10 | 0.40~0.70 | 0.90~1.15 | 0.025以下 | 0.025以下 | – | – | 0.90~1.20 | 0.10~0.25 |
SK3 | 1.00~1.10 | 0.35以下 | 0.5以下 | 0.030以下 | 0.030以下 | – | – | – | – |
SKS93 | 1.00~1.10 | 0.50以下 | 0.80~1.10 | 0.025以下 | 0.025以下 | – | – | 020~0.60 | – |
YK30 | 1.05 | 0.4 | 1.0 | 0.03以下 | 0.03以下 | 0.25以下 | 0.25以下 | 0.5 | – |
YCS3 | 1.00~1.10 | 0.1~0.50以下 | 0.60~1.10 | 0.030以下 | 0.030以下 | 0.25以下 | 0.25以下 | 020~0.60 | – |
SK3:炭素鋼です。通称「水焼きのSK」とも言います。
SKS93:SK3の油焼入れ対応品です。現在SK3と注文すると、SKS93が届きます。
YK30:大同特殊鋼の炭素鋼です。SKS93相当品です。
YCS3:日立金属の炭素鋼です。SKS93相当品です。
成分表の元:SUJは特殊鋼倶楽部の特殊鋼ガイド、YK30は大同特殊鋼の特殊鋼ハンドブック、YCS3は日立金属の赤本です。
SUJ2を炭素鋼と同様と言う人もいますが、成分表を見る限り、記号が違う分、違いますね。どこまで同じで、どこから違うのだろうか。材料の用途によるのでしょう。ただ、はっきりしている事は、ベアリングのような軸受けには、にSK3やSKS93やYK30やYCS3を使わないでしょう。
SUJ2で求められる事は、非金属介在物が少ないことと、耐疲労性です。
SUJ2は値段が安いわりに、厳しい事を要求される鋼種のようです。
SUJ2の生産量が工具鋼類とは桁違いに違うのでしょう。
4. 焼鈍し、焼入れ、焼き戻し
4-1 熱処理(高周波の特殊鋼規格表より)
鋼種 | 焼鈍し温度 | 焼入れ温度 | 焼き戻し温度 | 焼鈍しHB | 焼鈍しHRB | 焼入れHRC | 焼戻しHRC |
SUJ2 | 780~810除冷 | 800~840油冷 | 140~180空冷 | 201以下 | 94以下 | 63~65 | 60以上 |
注意:焼鈍しは球状化焼鈍しです。
焼入れ硬さは、工具鋼と同じ様な硬さです。
4-2 熱処理(大同特殊鋼の特殊鋼ハンドブックより)
鋼種 | 球状化焼鈍し | 球状化焼鈍しHRB | 焼入れ温度 | 冷却液温度 | 焼入れHRC |
SUJ2 | 780~810除冷 | 94以下 | 800~850油冷 | 50~80 | 62~65 |
焼入れ硬さは、炭素鋼のSKの類と同レベルです。SKの代わりに、SUJ2の丸棒を使用する所も有るでしょうか?
焼戻し例(大同特殊鋼の特殊鋼ハンドブックより)
鋼種 | 玉 | コロ | 輪 |
SUJ2 | 120~160 | 130~180 | 140~180 |
使用する部分によって、焼戻し温度で硬さを調節するようです。
4-3 焼入れ焼もどし硬さ曲線(高周波の特殊鋼規格表より)
SUJ2は、工具鋼と比較して、素直な焼入れ焼戻し曲線です。
4-4 ジェミニー曲線(特殊鋼倶楽部の特殊鋼ガイドより)
SUJ2の硬いのは表面から5mm程度で、後は10mmでHRC40に急降下。
4-5 高周波熱処理
高周波熱処理は、表面から1~2mmまでを硬化させる熱処理です。SUJ2スライドシャフトやSUJ2スライドパイプシャフトなどが高周波熱処理になっています。
4-6 まとめ(焼鈍し焼入れ、焼き戻し)
焼戻し:炭素量が1%近く含有している材料は、球状化焼鈍しが常識のようです。球状化焼鈍しで、切削性を良くしています。他と比較すると、難切削と言われます。後は、切削技術でクリアーするか、SUJ2の快削鋼を手配するかになります。
焼入れ焼戻し:焼入れ温度を840~850度で油冷して、焼戻し温度で硬さ調節ですね。きっと。
表面と内部で硬さ違います。ベアリングは表面の硬さなのでしょう。だったら、高周波熱処理で表面カリットと硬く、でしょうか。
高周波熱処理:熱処理業者に相談してください。業者により程度が異なると思います。
変形や変寸:当店が調べた範囲では、わかりません。個々のノウハウで乗り越えてください。お願いします。がんばってね。
5.まとめ
SUJ2は大量生産。低価格。厳しい品質。
このような三重苦状態で、製造メーカーは努力しているようです。
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